旅は道連れ世はつれづれに。主にアナログゲームや玩具について赴くままに描き募るブログ。長女と次女の成長記録もちょっとあり、です。
幻冬舎「知識ゼロからの」シリーズ
2009年10月03日 (土) | 編集 |
雑学本と言えば、ナツメ社の図解雑学シリーズをよく読んでましたが、幻冬舎「知識ゼロからの…」も内容が軽くて読みやすい上に、ポイントを押さえられたものが多いので、通勤電車の友として最近、よく読むようになりました。

と言っても、本によって内容は玉石混淆なので、取りあえず私が自分で買っても良いと思ったものだけをピックアップしてみました。


知識ゼロからの哲学入門 / 竹田 青嗣

amazonでレビューしている人が上手く説明しているので、特に述べることもないのですが(汗)、とにかく難解な哲学の入門者において、貴重な分かりやすい一冊。
哲学者の年表や参考書の記入もあり、まとめ本としても価値があります。

個人的には、哲学の歴史を追ううちに、哲学の存在理由やこれからの発展に読者の視点が自然と向けられる構成がよく出来ていますと思います。

“共通の人が確信できる原理こそが、強い哲学。自案を補強するための思索は弱い”と述べる著者の思想は明快で、理論をこねくり回したり、詭弁で相手の揚げ足取りをするような哲学に嫌気が差している方(うちの妻のような人(笑))に特におすすめします。


知識ゼロからの西洋絵画入門 / 山田 五郎

深夜テレビ「ざっくりマンデー」でも紹介された本。
山田五郎さんの説明が分かりやすくて、とにかく読みやすいです。
簡易にするためにやや決めつけ的な部分(特に芸術家の性格など)がありますが、興味を持つための入門書としては良く出来ていると思います。


知識ゼロからの日本絵画入門

「開運! なんでも鑑定団」でおなじみの古美術商、安河内眞美さんの著作。
作者の日本画に対する優しい愛情が読み取れて、日本画に興味を持ちやすい内容になっています。


知識ゼロからの美術館入門

日本の美術館を紹介している本。展示作品にも簡単に触れているので、美術館を訪れている気分にも浸れますし、実際に足を運びたい欲求にも駆られる良書です。
管理や予算など運営に関する話もあって興味深いですね。

個人的には建築(細かい点では休憩用の椅子)にも触れられている点が良かったです。


他には「知識ゼロからの日本の城入門」、「知識ゼロからの日本茶入門」が面白かったですね。
実践論理思考/高橋俊之
2009年10月01日 (木) | 編集 |
実践論理思考/高橋俊之

『論理思考』というと、堅いイメージや、理論で相手を打ち負かす場面が浮かんでくると思いますが、本書は、論理思考を状況に照らし合わせることで、血肉の通った対話の方法にまで言及しているのが面白いところ。

興味深い具体例をあげて話を進めているので、平易で読みやすいです。
(赤字のお店を畳もうとしない父親への説得法や、仕事を減らしてほしいという上司へのお願いなどは面白かったです)

欠点としては後半では似たような話が多いことと、説得などに比べると自己実現に実践論理を使うことの有用性がいまいち感じられなかったことが挙げられます。

それでも一読の価値はかなりあるこの本。
取りあえず、図書館などで借りてさっと読みたいなら、1・3章と5章あたりを見れば本質的なものは掴めると考えます。
(4章のメカニズムの話はちょっと退屈なのでまずは飛ばしても良いと思います…)
夏目友人帳 8巻
2009年07月05日 (日) | 編集 |
『夏目友人帳(なつめゆうじんちょう)』の8巻を妻が買ってきたので、借りて読みました。

『夏目友人帳』は、雑誌「LaLa」「LaLa DX」で連載中の少女漫画です。
ストーリー概要は、以下のような感じ。
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妖(あやかし)が見える高校生・夏目貴志は、祖母レイコの遺品「友人帳」を手に入れたことから、彼らから狙われるようになってしまう。
「友人帳」は、祖母が妖を手下にするために、名を奪って集めた契約書であったのだ。
夏目は「友人帳」を欲する自称用心棒の妖怪「ニャンコ先生」と出会い、共に妖怪達に名を返す日々を送り始める。
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第8巻は、今までの日々で信頼を築きつつも、今一歩引いていた感があった夏目の人間関係について触れている話がメインでした。
妖が見えることを知っている田沼や多軌(タキ)といった友達や、普通の学友である西村と北本との関係が、文化祭というイベントを通して掛け替えのない日常として実感されていく描写が秀逸です。
後半は、世話になっている藤原家との出会いが語られる一遍。これも今まで親戚に疎んじられ、たらい回しにされていた夏目にとって要となるお話でした。

個人的に、この作品は「妖怪・人間ともに心を閉ざしていた夏目が、ニャンコ先生や友人達との出会いにより、苦悩しつつつも自分の立ち位置を模索していく」物語だと思っているので、今回のような、主人公や周りの心象を丁寧に描いた話は、かなり好みです。
夏目、田沼、多軌といった真面目な3人なのに、微妙に噛み合わないところも、笑いどころとしてアクセントになっていて楽しめました。

前巻も、「夏目が妖怪を操る能力を持ちつつも、それを使わない」ことなど、妖怪と夏目の関係を考えさせる内容にはなっていましたが、的場一門とか名取さんとか、人間の異能者が多く出ていたので、微妙に少年漫画チックな内容になっていましたからね…。
アニメ化の影響で微妙にそっちに流れているかと思いましたが、また原点に戻ったような話で安心したというのが実感です。

アヤカシも、人に取りつく、つけ狙う、弄する、悪夢を見せるといった間接的なものが多く、ストーリーの中心となりつつも、夏目にとって「周りの人間に影響する」最も嫌な相手だっただけに、怖さが心理的に伝わってくる構成が良かったです。
特に頼りになる用心棒であるニャンコ先生も前半は負傷退場してましたらかね…。

だからこそ、友人との信頼関係を書けたとも言えますが、改めてニャンコ先生の偉大さも感じられました。そういえば横暴だけど世話焼きな彼は微妙にツンデレキャラ…ですよね(笑)

非日常の話と、日常の話、どちらも夏目の核だけに今回のようなそれらが交差する話は、これからも重要な差路として出てきそうですね。


アニメも第2期まで放送されていて、現在再放送中と、なかなか好評のようなので、第3期もそのうち放送されるでしょう。
心理表現や繊細さは原作が上ですが、効果やアクションなどの少女漫画が苦手にしている分野がしっかりと描かれているので、補完的な意味合いでどちらもオススメです。

そういう意味では同じく少女漫画で読んでいる『スキップビート』は、動きが漫画でちゃんと書かれているだけに、逆にアニメは、出来が良いと言われても見る気がしないのだろうなぁ…。
第141回芥川賞、直木賞の候補作決定
2009年07月02日 (木) | 編集 |
早いもので、7/1に第141回芥川賞、直木賞の候補作が決定しました。
というか、やはり年2回は多いよ…。

芥川賞は相変わらず全然分かりません。
正直、過去に芥川賞を取ったような純文学を読んでいたのは、平野啓一郎ぐらいかも…。
最近のマスコミ報道における、作者のルックスだけが話題になる傾向も気に入りません。

直木賞は、過去の実績から考えると北村薫でしょうね。
というか、まだ取ってなかったんだ、という印象です。調べてみると確かに、候補には5回になっていますが受賞はしてませんね。
経歴からすると審査員になっていてもおかしくないぐらいですが…。

次点では、貫井徳郎か万城目学でしょうか。
あと、西川美和は映画の「ゆれる」の監督さんでもありますが、面白かったので「きのうの神さま」も読んでみようかと思います。

個人的に驚いたことには、今回も道尾秀介が「鬼の跫音」で候補になっています。
ちょっと前にブログでネタにしたので喜ばしい限りですが、大衆向けでないこの内容でよく候補になりましたね(笑)
今後も注目されるかと思うと、なかなか嬉しいです。
「鬼の跫音(あしおと)」/道尾秀介
2009年06月25日 (木) | 編集 |
最近では「カラスの親指―by rule of CROW's thumb」で第140回直木賞候補にもなった道尾秀介。

私も好きなミステリ作家さんなのですが、最近は前述の「カラスの親指」や「ラットマン」など、比較的、大衆向けというか受け入れやすい作品が多くて、初期の頃のファンとしては、ちょっとがっかり感もあったのですが、この初となる短編集は、作者が「自分の書きたいものを、そのまま小説にした」というだけあって、尖ったテイストの作品が多くて嬉しくなります。

どの作品も良いのですが、個人的には「ケモノ(本題は獣編のみ)」と「悪意の顔」のような、何気ないラスト近くの文章で、今までの雰囲気を一変させるような手法がお見事だと思います。

ただ、後味が悪い作品が多いので、一般にはあまり薦められないのも事実。
(だからこそ、最近の作風はマイルドになっているのでしょうけど…)。
この作者によく見られる、「どこにでも居そうなトラウマを持つ少年や青年が異常な日常の隙間にはまり込む」という展開は、有名どころでは「乙一」なんかと共通項があるので、好きな人にはオススメできるのではないかと思います。